第15章 緑とオレンジ
「真ちゃん…っ」
「……高槻、」
「………嬉しい、ありがとう」
やっと追いついた。
心結は緑間の隣に肩を並べると、手を優しく握り締めた。
「…家まで…手ぇ繋いでもいいかなぁ?」
「…あっ…あぁ」
まだ風が吹くたびに外は冷たい。
けれど、繋いだ左手だけは熱が伝わってきてあったかい。
ゆっくりと息をはくと、それに合わせるようにゆっくりと心臓が動いていた。
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お互い緊張してか、何も喋らないまま家まで手を繋いで歩いていた。言葉はないけれど、とても満たされた気分。
緑間は歩幅を合わせるようにゆっくりと歩いてくれて、普段はぶっきらぼうだかそんなところに彼の優しさを感じる。
「送ってくれてありがとう!」
「遅くなってすまない」
「ううん!…今日は楽しかった。また一緒にどこか行こうね!」
「今度はお前が行きたいところに行くのだよ」
「うん!絶対だからね!」
「あぁ。」
「今日はありがとう!遅くなっちゃうから早く帰ったほうがいいよ!」
「では、また明日なのだよ」
「うん!バイバイ!」
心結の家で、二人は門を挟んで静かに話をする。
手を振られ、満面の笑顔を見せる心結。
一度は背を向けた緑間だが、再度振り返って心結の名前を呼んだ。
「……高槻!」
「ん?どーした?」
「……今度、ふたりで」
言いかけた、その瞬間。
「あれ、心結?」
「あっ、お母さん!」
緑間の後ろから突如現れたのは茉紘だった。
「…お母さん?」
「そうそう!お母さんです!」
「こんにちは…ではない、こんばんは」
「こんばんは〜」
「お母さん何してたの?」
「買い忘れたものがあったからスーパー行ってたのよ。…もしかして彼氏さん?」