第15章 緑とオレンジ
「遅くなってしまったのだよ。ほら、帰るぞ。」
緑間は心結に背を向けると、スタスタと歩き始めた。
「真ちゃんっ!真ちゃんの家こっちじゃないでしょ?」
「……送っていく。」
「えっ!いいよ!遠回りになっちゃう!」
「気にするな。付き合わせてしまったからその礼だ」
「一人で帰れるし大丈夫だよ!」
大股で歩く緑間を必死に早歩きで追いかける心結。緑間の一歩が大きくて、早歩きでないと追いつかない。
送ってくれるのは嬉しいけれど、自分が寄り道しようと誘っておいてそこまでさせるのはどうかとも思う。
「わたしが寄り道しようって誘ったんだし、明日も朝練で朝早いからい…」
「うるさいのだよ。」
本当に申し訳なくて、緑間を引き返させようと説得していると、言葉は緑間によって遮られた。
「お前は黙って着いてくればいいのだよ!………もう少し一緒にいさせろ」
「っ………///」
思いもしていなかったいきなりの緑間の言葉に心結もタジタジ。本当あの偏屈緑間が言ったのか疑うくらいだ。
心結が黙ってしまってから、緑間も言った言葉に恥ずかしくなったのか、かすかに明るい街灯の光が緑間を照らす度に赤くなって見える。
そして、だんだんと歩くスピードを遅めた。
「……もう少しだけ一緒にいたいと思ったら悪いか?」
悪くなんかない。
わたしだっておんなじことを考えていたんだから。
心結はゆっくりと前を歩いている緑間に手を伸ばした。
「!?」
「真ちゃんっ…」
ギュッと、手を握る。
掴んだ右手は火照っていて、自分の手にも伝わって熱が篭る。