第15章 緑とオレンジ
「お父さんね、メガネはかけてなかったけどお母さんと出会った頃はこんな感じだったのよ。真面目でいい人だったわ。」
父の記憶はある程度の年齢からしか覚えていない。
だが幼かった自分でも分かるほど、父が真面目だったのは確かだ。
「彼氏さん、名前は?どんな人?」
「緑間 真太郎くんで、変人で偏屈なんだけどバスケがうまくて頭がいい、です」
よほどこの話を聞くのが楽しいのか、茉紘は終始ニコニコしながら娘の話を聞いていた。
リビングでは空が大人しく一人でテレビを見ている。
「今度会いたいなぁ、紹介してね!」
「えっ!…うん!」
紹介してくれと言われるとは思ってなくて、予想外のことにドキリ。
けれどお母さんには緑間の存在を知ってほしいとも思う。
「心結が好きになった人だもの、きっと素敵な人よね。」
とりあえずは直接お母さんに好きな人がいるということを伝えられて一安心だ。
それに否定することなく喜んでくれた。
それだけで今はいいと思う。
きっと、今頃は高尾も母親から質問攻めにされているのだろうな、と想像して笑う。
高尾の母親は気が強い人だから、わたしと違ってもっとバシバシといろんなことを聞かれているに違いない。
その上妹がいたらさらにからかわれていると思う。
わたしも今度和成にいろいろ聞こーっと。
そう考える心結であった。