第15章 緑とオレンジ
楽しい家族団欒の時間はあっという間に過ぎる。
茉紘がいる間、空は祖母の家を離れここで暮らしていた。
茉紘が作ったご飯を食べ、家族で話をしたりテレビを見たり、本来あるべき家族の姿がとてもありがたく感じた。
朝起きてリビングに行けば、そこには母がいるし学校を終え、部活から帰ってくれば母が迎えてくれる。
いつもみたいに誰もいない家で過ごしているのではないと実感できた。
「和成くんもおっきくなったわね!」
いつものように部活帰り、高尾と家まで帰ってくると玄関の前で茉紘と高尾の母が立ち話をしていた。
茉紘と高尾の母は昔から仲が良く、今でもその関係は変わっていないらしい。
「お久しぶりです!」
「和成くん、またかっこよくなっちゃって〜!」
「褒めても何も出ないっすよ〜!」
「ほんとにさらにかっこよくなったわね!また背も高くなって」
「へへっ、ありがとうございます!」
茉紘はポンポンと高尾の肩を叩くと、高尾は恥ずかしそうに笑いながら言った。
しばらくそこで四人で立ち話をしていると、茉紘が高尾に問いかけた。
「和成くん、こんなにかっこよかったら彼女とかいるでしょ?」
ふと、隣にいる高尾の顔を覗き見ると、なんとも困った顔をしていた。
高尾もまだ親には打ち明けていないのだろうか。
「えっと……ハイ。」
隠しても仕方がないと思ったのだろう、高尾は言いにくそうにカタコトでハイと答えた。
「えっ!ウソ!!?」
一番驚いていたのは高尾母。
目をまん丸くしながら驚いた顔で高尾を見ている。
「やっぱりかっこいいからいると思ったのよね!心結も早く彼氏作りなさいよー!」
茶化すように茉紘は言った。
その瞬間、ニヤっと笑う高尾が尻目に見えた。
まるで「言えよ」と言わんばかりだ。