第14章 Beat
「あん時からヘンなんだよなぁ」
「ヘン?」
「……西堂」
そう言うと高尾はいきなり夢を抱き締めた。
あの時と同じように、強く。
「……っ!!!???」
外はまだ微かに明るい。
通りに人はいないが、人がいたら抱き締められているということは明らかに分かってしまう。
だが、高尾は一向に夢を離そうとはしない。
「……あのっ…高尾くん?」
「………西堂」
「ほんとにどうかしちゃったんですか…?」
高尾は一旦夢から手を離すと、夢の肩を掴んで言った。
「……西堂」
「……はいっ」
少し間があく。
「………好きだ」
「……へ?」
「……オレと付き合わねぇ?」
ほんとになんて言ってるか分からなくて、予想もしていなかった言葉に夢は目をキョロキョロと泳がせた。
でも目の前にいるのは高尾で、その高尾がまた自分のことを抱き締めている。
高尾くん、ほんとにおかしくなっちゃったの?
「……西堂、好き」
「高尾くんっ、」
「今さらだって分かってる。でも西堂のこと好きになっちゃったみてぇ…」
見上げると、高尾の顔は微かに赤くなっていた。
夢かと思い、高尾に抱き締められたまま頬を抓ってみても痛いだけで何も起こらない。
でもその痛みが現実だと教えてくれた。
「……いまさらだって思われるかもしんねーけど、好き」
「高尾、くん」
「………だから、付き合ってください…」
弱々しい声で言う。
高尾はすがるように夢をまた強く抱き締めた。