第14章 Beat
こんなことを思ったまま、毎日を過ごしていても仕方がないし、夢にも申し訳ない。
何も話すことなく、二人は並んで家へと続く道を歩いていた。
去年のまだ出会ったばかりのような頃とは違う。
隣には心結もいないし緑間もいない。
いるのは夢だけだ。
いつもだったら重苦しい空気に耐えかねて何か言おうとする高尾も、今日は黙っていた。
なんて、切り出そうか。
チラッと横を向いてみても、俯いているせいか夢の顔は見えない。
「……西堂」
「……なに?」
「……あの、さ」
言いにくいが言うしかない。
これだけは言っておきたかったから。
「あの時はゴメンな。」
「あの時?」
「公園で…抱き締めた時のこと」
「全然大丈夫だよ!」
夢は顔を上げて答えた。
でもその顔はなぜだか悲しそうで。
「…わりーって思ってる。自分の都合のいいように無理矢理お前を抱き締めて、最低だよな」
「………」
夢は何も答えない。
「…きっと、西堂を傷付けた。ほんとにゴメン。……でも」
夢は言葉の続きを待った。
「…でも、そのおかげで楽になったんだ。ありがとう」
「高尾くん……」
その高尾の言葉が嬉しくて、夢は目を潤ませた。
やっぱり、まだ高尾くんが好き。
高尾はその後も謝りながらも、夢が「気にしてないから大丈夫だよ。」と言うと申し訳なさそうに笑った。
なんで、忘れられないんだろう。
わたしにもまだ可能性がゼロではないと思ってしまう。