第14章 Beat
それから数日経っても何も変わらなかった。
心結と緑間の関係も前と何も変わらないし、あんなことがあってからも高尾と夢の関係も特に変わりはなかった。
心結と緑間に関係を告げられたあの日、分かってはいたがやはり胸が締めつけられるような思いだった。
オレは、心結に想いを告げることすらしていないのに。
心結が倒れた時から、あるいは両想いだって知った時からこの結末になるって分かっていたはずなのに改めて言われるとキツい。
あの時は平静を装っていたが本当は今すぐにでも走り出したかった。
夢があの場所にいなかったら。
なぜだか、そんな姿を夢に見られなくなかった。
諦めきれない、でも自分の想いを告げられない姿なんて見られたくなかった。
西堂は完全にオレのことを誤解している。
きっと、西堂が思っているほどオレはできた人間じゃない。
だからなんで夢が自分のことをこれほどまでに好きだと言ってくれる理由が分からなかった。
自分でも引くくらい未練タラタラなんだぜ?
まじでイヤになるっつーの。
夢を抱き締めた時も自分を最低だと思った。
あの時はただ心結を忘れたくて、その場しのぎで夢に助けを求めた。
今ならどうなってもいいと思っていたし、何よりも辛かった。
普通なら、一度フッた女に自分から助けを求めるなんて最低だと思うしプライドが許さない。
その時はただ、自分のことを好きだと言ってくれる人に頼ったにすぎない。
まだ自分のことを「好きだ」と言ってくれる保証なんてどこにもないのに。