第14章 Beat
「……西堂」
不意に名前を呼ばれ、チラッと上を見上げると高尾と目が合った。
高尾の瞳に吸い込まれてしまうような気がして目が離せない。
「慰めてくんね?」
「高尾、くん」
「そしたらキッパリ忘れられるからさ。」
その声はどこか悲しそうだった。
今まで一度もこんな弱々しい高尾を見たことがない。
見ているのが辛くて、思わず「YES」と言った途端、優しく、強く抱き締められた。
引き寄せられると、夢もそれに応えるように高尾の背に腕を回す。
一回フラれた相手に、こんなことしてバカみたいだなぁ…
そんな気持ちはあった。だが今だけでも高尾が自分を望んでくれるならそれに応えたい。
諦められないのはわたしも一緒なんだ。
「……西堂、サンキュ。」
そう言われた途端、夢の想いは確かなものに変わった。