第14章 Beat
その瞬間に心臓が早くなって、どうしようと思った。
けれど知らん顔をするわけにもいかず、夢は意を決して高尾の前に顔を出した。
「…あのっ、ごめんなさいっ」
「気づいてねーと思った?ホークアイなめんなよー。見えてんだかんな!」
最初から、高尾には全てお見通しだったのだ。
そこにいた理由を話した。
夢はただ謝ることしかできなくて、頭を下げる。
絶対に最低なやつだと思われた。
目を瞑りながらそう思っていた。
だが、高尾から返ってきた言葉は予想外のものだった。
「別に怒ってねーよ!」
変わらず大好きな高尾の声。
その言葉を聞いた瞬間、少しだけホッとした。
そのホッとしたというのは世間体でという意味も含んでいるのだが。
高尾は本当に怒っていないようで、目の前で何事もなかったかのように笑っている。
「ごめんなさい、帰り道で三人を見かけたから声をかけようと思ったんだけど…」
「あんな話してちゃ話しかけらんねーよな。」
かける言葉が見当たらない。
高尾はそんなこともお構いなしで、自分のペースで話を続けた。
心結と緑間が付き合うことになったこと、前から両想いだったこと、それを知って告白しなかったこと。
全部話してくれた。
話し終わったあとにゆっくりと顔を上げると、寂しそうに笑っている高尾の顔が目に入った。
あぁ、やっぱり高尾くんは心結ちゃんが好きなんだ。
今の高尾を見ているとまた泣き出してしまいそうで、夢は嗚咽をぐっと堪えた。