第14章 Beat
…………なんで?
なんで高尾くんはそんなに笑顔でいられるの?
いつもと変わりない高尾の声を聞いていると涙が溢れそうになる。
二人の事実を知ってもなお、今までと変わらず二人と笑顔で話せる高尾がすごいと思った。
自分には関係のないことなのになぜか涙が溢れてきて止まらなくなる。
こんなことなら、足を止めずに一目散に帰るべきだった。
夢はその場にしゃがみこんだ。
すぐに走って逃げてしまいたいけれど立ち上がることができなくて、うずくまった。
もし気付かれたらどうしようとか、そんなことなどもう頭になくて、ただ溢れる涙を止めようとするのに精一杯。三人の会話すら頭に入ってこなかった。
しばらく経って、やっと三人の声が聞こえてきて我に返った。
立ち上がって恐る恐る中を覗いてみると、心結と緑間は既に反対側の出入り口から公園を出ようとしていた。
でも、高尾は一緒に出ようとしない。
心結と緑間が遠くなるまでずっと鞄の中を見つめていた。
完全に二人が見えなくなったところで、高尾は大きな溜め息をついた。
そして立ち上がる。
「…ってことだ。」
独り言?
誰に言っているのか分からなかった。
「そこにいるのは分かってんだぞー」
独り言にしては不自然だと思って、夢は高尾がいる方を覗きこんだ。
見ると、高尾はこちらに向かっていた。
……わたしに言ってるの?
「……西堂」
ドキン。
自分の名前を呼ばれてドキッとした。
まさか、バレていたなんて。