第14章 Beat
「…………………」
は?
誰が?
誰を?
好きと言ったその声は聞き慣れている、毎日聞いているあの声に聞こえた。
高尾よりも低い声。
悪い予感しかしない。
高尾は中に入らず、その場に踏みとどまって声の話の続きを待った。
恐る恐る、誰にもバレないように。
「オレは高槻が好きなのだよ。」
声の主は間違いなくそう言った。
その途端、泣き出す女の子の声。
見なくても分かる。
「…………………」
確実に緑間と心結だった。
言葉が出てこない。
心結にあの話を聞かされてからオレの恋はその時点で終わったと思った。
心結と緑間は両想いで、ずっと心結に片想いし続けてきたオレに入り込む場所なんてなかった。
だから心結に告白せずになんとも思ってないフリをして頑張れよと声をかけたんだ。
心結と緑間の気持ちを優先して、諦めたフリをした。
でもそれはやっぱり"フリ"だったんだ。
諦めたつもりだったけど、まだ心のどこかでは心結が好きだった。
まだ心結のことを諦めきれていなかったんだ。
心結には幸せになってほしいと願いながらも、その相手が自分であるならどれだけ幸せなことかと思う。
だから今だって二人のことを素直に喜んであげられなくてこんなに苦しくなるんだ。
いつかはこんな日が来ると分かっていたのに。