第13章 Heart
いきなり大きな声で名前を呼ばれ、びっくりして怖くて涙が止まった。
「…高槻、手をどけろ」
「…やだ」
「どけるのだよ。」
「やだ…っ…」
泣いているところを見られたくなくて、緑間に背を向けた。
「……っ……」
すると、頭に手の感触があった。
大きいけどあったかくて、優しい手の感触。
なぜか落ち着いて心がほどけていくようだ。
心結は驚いて、恐る恐る後ろを振り返る。
見ると、緑間が頭を撫でてくれていた。
「す、すまない。女に泣かれるとどうしていいか分からないのだよ」
あたふたしている緑間を見て、胸が締め付けられて、やっぱり好きだと思ってしまう。
緑間にとって、今はこれがいっぱいいっぱいの優しさなのだ。
「すまない。……泣きやんだか?」
「…なんか、慰められてるみたい。」
考えると面白くなって、あたふたしている緑間が可愛くて心結は笑った。
「…やっと、笑ってくれたのだよ。」
「え……?」
「やはり、お前は笑っている方がいい。」
「……?」
そう言って、緑間は口元を緩めた。
いきなりの言葉に今度はこっちが訳がわからなくなって、更に胸の鼓動が早くなる。気付けば涙も止まっていた。
「あの時は、すまなかったのだよ。」
「あの時?」
「オレの家に来た時のことだ。オレがお前の気に障るようなことを言ってしまったのだろう?」
「………まだそのこと気にしてたんだ。」
「当たり前だ。……とにかく、謝る。すまなかった。」
「ううん。わたしこそごめん。ごめんね。」
心結は緑間の目を見てにっこりと笑った。
すると緑間も微かに笑った。
「やはりオレは、高槻が好きみたいだ。」
「…………え?」