第13章 Heart
以前ならこんなこと絶対しなかったし、有り得なくて自分らしくない。
好きになればなるほど素直になれなくて、自分勝手で素っ気ない態度をとってしまう自分が嫌になる。
今なら夢の言っていたことが分かる。
早く、謝って気持ちを伝えなきゃいけないのに。
両想いかもしれないのに、なんでわたしはこんなに怖がっているんだろう。
ただ、自分から言うのが嫌なだけかもしれない。
いや、でも告白したところでどうする?
両想いだったとして、付き合う?緑間と?
あの緑間真太郎と?
それに友達ってだけじゃなくて、バスケ部の部員とマネージャーの関係だ。そんなベタな展開普通ある?
でも、そんなこと言ってもやっぱり好きなものは好き。
もしこの恋がうまくいったら、恋人同士の関係になるの?
悩んでいる間に、緑間との距離がどんどん遠くなっていくようで、でも言えなくて、もどかしくてどうにかなりそうだ。
いつも一緒にいて、バスケをして話していたのに。
今だって目の前にいるのに。
「ちょっと!心結!」
「うわぁ!」
ぼーっとそんなことを考えていると、同じマネージャー仲間に後ろから大きな声で名前を呼ばれ、肩を叩かれた。びっくりして振り返ると、頬を膨らませているマネージャーの姿があった。
「もう!何回も呼んでるのに!」
「えっごめん!」
「もう練習始まるから!早く行くよ!」
気付くと、そこに緑間の姿はもうなく、アップを始めていた。
「心結大丈夫?めっちゃぼーっとしてたけど!」
「うん!」
声や姿に全く気が付かないほど、ぼーっとしていたらしい。自分の世界に入り込んでいたようで少し恥ずかしかった。
辺りを見渡しても、高尾の姿はまだない。
長い委員会のようだ。
昨日は疲れて、そのまま家に帰ったら寝てしまった。
結構な時間寝ていたはずだが、疲れが溜まっているのかまだ眠くて立っていても朦朧とする。
部員達の声も、今日はイマイチ頭に入ってこなかった。
やることいっぱいあるけど、今日も早く寝なきゃな……