第12章 キミのせい
「……その……昨日は、すまなかったのだよ……」
「………へ?」
小さな声でボソボソと言うものだから何と言ったのかはよく分からなかったが、謝られたのははっきりと分かる。
「昨日、いきなり飛び出して帰っていってしまっただろう。理由は分からないが、それはオレがお前を怒らせるようなことを言ってしまったからだろう?……すまなかったのだよ」
何を言ってるんだこの男は。
この男はわたしが昨日怒って家を飛び出していったと思っているのか。どこまで鈍感なのだ。
それ以前に、家を飛び出すときは怒っていなかっただろうが。
「……真ちゃんて、バカなの?」
「なっ!謝っているのにバカとはなんなのだよ!」
「もうほんとやだ!鈍感!偏屈!おは朝バカ!もう知らない!」
「おい高槻!」
心結は緑間を睨みつけると、勢いよく教室のドアを閉めた。
その瞬間、教室が静まり返って全員がこちらを見ている。最高に恥ずかしかったがそんなの知るもんか。
全部全部真ちゃんのせいだ。
そう思った途端、涙が溢れそうになる。
夢が駆け寄ってきてくれて、どうしたの?と聞いてくれた。
「ちがう、なんでもないの」
周りから見れば別れ話で揉めたカップルのように見えるだろうが、生憎そんな都合のいい話ではさらさらない。
告白してもいないし、付き合ってもいないのだから。
「え、心結と緑間くんて付き合ってるの?」
その後クラスのみんなからはやり取りの理由を聞かれたが、バスケ部の問題だと伝えておいた。
やはり色々な人に勘違いされ、心結はすぐに後悔することになる。
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「あれ、真ちゃんどしたん?めっちゃ怖い顔してるけど」
「………知ったことか」
高尾にはさっきのことを話した。
昨日、忘れ物を届けにきた心結を怒らせてしまって、それを謝りにいったらさらに怒らせて怒鳴られて帰ってきたと。
「やべー、爆笑なんだけど」
「…………」
「心結に怒鳴られるくらい怒らせるって何したんだよ」
「心当たりがないから困っているのだ。」
高尾は隣で爆笑、緑間は椅子に座って机に顔を埋めていた。