第11章 Come back.
顔が真っ赤だ。
耳まで赤くなっている。
「高槻!大丈夫か!」
心配になって、心結の体を揺さぶった。
心結はハッと我に返って涙目の、真っ赤な顔のまま立ち上がった。
「大丈夫!ごっごめんわたしもう帰るね!お母さんにありがとうございましたって伝えといて!」
早口にそう言うと、心結は置いてあった自分のカバンを掴んで一目散に緑間の部屋から出て行った。
残されたのは緑間と、何故かドアの前で呆然とする母の姿が。
オレはなにか、高槻を怒らせるようなことを言ってしまったのだろうか。
特に思い当たるフシがない。
避けられていることがそんなに不快だったのだろうか。
分からなくてキョトンとしていると、母が立ち上がって部屋の中に入ってきた。
「いきなり真太郎の怒鳴り声が聞こえたから何かと思って来てみれば、アンタ……」
「……オレは何か、高槻を怒らせるようなことを言ってしまったのか…?」
緑間の問い掛けに、母は苦虫を噛み潰したような顔つきで息子の頭を小突いた。
「そーゆーことじゃないでしょ!全く……何から言っていいか分からないわね……というより、ドンマイ。」
ちんぷんかんぷんでその場に座りこけていると、母は部屋を出る際、緑間に向かって手を合わせ階段を降りていった。
「どうか息子が幸せになれますように!神様!」
本当になんなのだ、訳が分らない。
緑間は最高に深いため息をついた。
今日はラッキーアイテムを学校に忘れてきたのがいけなかった。まずは反省して以後さらに人事を尽くすとしよう。そしてとりあえず謝ろう。
心結を怒らせてしまったと勘違いする緑間だったが、心結に打ち明けたことで少し動悸が治まり安心する緑間であった。