第11章 Come back.
そう言っても、心結はなお心配そうな顔で訴える。話を進めるほど、言葉を濁すほど必死に問いかける。
「それに……あの本!今日のラッキーアイテムだって……」
緑間は思い出してハッとした。
確か読んでいた本のタイトルは、『動悸・息切れ・胸の痛みが気になったら読む本』だった。
「もしかして何かあるんじゃないの?本当に大丈夫なの?それにっ……」
段々と心結の話すスピードも速くなって、本当に心配そうな顔をしたいた。
そんなに心配してくれていたのかと今になって気付く。
「それに……最近、わたしのこと避けてない?」
図星だった。
核心を突かれて何も言い返せなくなる。
高槻には全てお見通しだったということか。
「和成も最近様子がおかしいってずっと言ってたんだよ?それは何か事情があるからじゃないの?……真ちゃん前言ってたよね?辛いことがあったら頼ってもいいって!わたしだって……」
心結の目尻には涙が浮かんでいた。
ダメだ、泣かせてしまう。
「真ちゃんが病気だってわたし……っ」
違う。
違うのだよ。泣かせたいのではない。
「違う!」
怒鳴りつけるようにいきなり大声を上げた緑間に、心結はびっくりして目を見開いた。
「……違うのだよ。確かにオレはここ最近お前を避けていた。だがそれには理由がある。」
「………?」
心結は何も言わず、ただ黙って次の言葉を待っていた。
「………最近、お前といると動悸がする。胸が苦しくなって落ち着かない。だがその理由が何なのか分からないのだよ。空と遊んだ、あの日からだ。」
「……………………」
「ぼーっとしていたのもそのせいだ。だからお前を避けていた。すまない、迷惑だからという理由ではないのだよ」
「……………………」
「…今解決策を考えているところだ。こんな病気、聞いたことがないからどうしていいか分からないのだよ」
何がなんだか分からなくなって、一方的に喋ってしまったがそこでようやく心結の様子がおかしいことに気が付く。
「………高槻?」
緑間は、ずっと下を向いている心結の顔を覗き込んだ。