第11章 Come back.
心結は家へと続く道をとにかくひた走っていた。
何が起こったか分からない。
さっきまで緑間の家にいたのに飛び出してきてしまった。
何が起こった?わたしはなぜ泣いたのだろう。
真ちゃんを心配して?それとも避けられていたのがそんなに悲しかった?その時は感情的になっていたのだと思う。
分からないけれど、飛び出してきた理由は分かる。
あんなことを言われるなんて思ってもみなかったから。
『最近お前といると動悸がする。胸が苦しくなって落ち着かない。』
何が病気だ。何が動悸だ。
そんな病気あるわけないだろう。そんなものは病気とは呼ばない。
その最初の言葉だけが脳裏に焼き付いて他は何を言われたのかよく覚えていないがあの時の、本当に熱を帯びたような顔が忘れられない。
これではこっちの気が滅入ってしまう。
どうしよう、どうしよう、どうしよう!
こんなはずじゃなかった。
いつも一緒にいるのが当たり前で、この気持ちは尊敬だと思っていたのに。わたしに嫌気がさして避けられているのだとずっと思っていたのに。
さっきの一言だけで変わってしまった。
なんてわたしは単純なんだろう。
本当は今までの態度で充分好きになっていたはずなのに。バスケが天才的にうまいところも、我が儘で偏屈で面白いところも、本当は優しくて意外と面倒見がいいところもぜんぶぜんぶ。
でもそれより気になるところがある。
緑間が言っていたのは何だったのだろうか。
あれは告白のつもり?いや、きっと違う。
酷すぎるほど鈍感な真ちゃんがあんないきなり面と向かって言うはずがない。それに真ちゃんはあれが病気だと本気で思ってる。
全く、あの男はどこまで鈍感なのだろう。今だけは嫌になるほどだ。
でもそれはもしかしたらわたしの勘違いかもしれない。
勘違い野郎だと思われたくないけれど、今はそれでもいい。
あれだけでバカみたい。
それだけで、気持ちが変わっちゃうなんて。
あのバカみたいに素直で鈍感な男のせいでわたしのほうが具合悪くなっちゃう。
家に帰って何時間経っても、この胸の高鳴りは止まらなかった。