第11章 Come back.
まさかあの緑間の母親がこんな人だなんて思ってもみなかった。意外なことに少し面白くなって頬が緩んだ。
「それより!安心したわ!」
「…?何がですか?」
「………あの子あんな性格でしょ?だから少し心配してたの。高校生なんだからバスケと勉強ばっかりしてないでちゃんと高校生活も楽しんでほしいってずっと思ってたから…」
緑間の母は俯きがちに言った。
「部活と勉強に青春をかけるのもいいと思うんだけど、高校生なんだからもっと友達いっぱい作ってそれ以外も楽しんでもらいたいなって。親なら誰もが思うことよね。それにあの子、自分のことはあんまり話したがらないから心配してたんだけど、こうして忘れ物届けに来てくれたり、朝迎に来てくれる友達がいて、安心したわ」
それはきっと高尾のことだろう。
本当に安心したように微笑むものだから、心結も自然と笑顔になった。
「心配する必要はないと思います!緑間くん、バスケも勉強もできて本当にすごいと思うんです。その上天才と言われながらも努力を怠らない。わたしを含めバスケ部のメンバーも先輩達も、みんな緑間くんのこと大好きで尊敬してるんです!」
そう言われて緑間の母もとても嬉しそうだった。
「そう言ってくれてわたしも嬉しい。ありがとう!」
真ちゃんは本当に愛されてるよ。
緑間の母の安心した笑顔を見てつくづくそう思う。
その反面、少しだけ羨ましくも思った。
「中学生の頃より今の方がバスケしてるのが楽しいって真太郎、言ってたのよ。」
少し驚いた。まさかそんなことを言ってくれていたなんて。なんだか胸があったかくなった。
その後も緑間の話で盛り上がっていると、リビングのドアが開き、練習着姿の話題の人物が目をこすりながら入ってきた。
「あ、真太郎」
「真ちゃん!お邪魔してます!」
こっちを見て驚く緑間。
寝ていたのだろうか、髪が少し乱れている。
「なっ何故お前がこんなところにいるのだよ!」
「忘れ物届けに来てくれたのよ」
「そうそう。真ちゃん大事なラッキーアイテム置いてっちゃうんだもん!それより具合大丈夫?」
心結は立ち上がって緑間の方に近付こうとするが、それを止めるように後ずさりする緑間。
あまり見ない息子の反応に、面白くなって緑間の母はクスクスと笑った。