第11章 Come back.
部活帰り、もう辺りは暗いが急いで緑間の家に向かう心結。
忘れ物を届けて、急かす以外にも心結にはもう一つ聞きたいことがあった。
気の所為かもしれないが、最近、妙に避けられている気がする。心当たりがないせいか、その理由が気になる。
言いにくいがそのことも聞いてみたくて、うろ覚えな道を早歩きで進むと見覚えのある家に着いた。玄関の表札には「緑間」の文字。
ここで間違いない。
恐る恐るインターホンを押すと、女の人の返事がして声の主であろう人が玄関のドアを開けて姿を現した。
「はーい」
出てきたのは髪の長い綺麗な女の人だった。
「あっこんばんは!夜遅くに申し訳ありません!!!」
「あら、珍しいお友達?」
女の人はにっこりと笑うと、ガラガラと門を開けてくれた。
心結は緊張で言葉を失いその場に立ち尽くしていると女の人が先に口を開いた。
「で?何かご用かしら?真太郎なら体調崩したとか言って上で寝てるけど」
そう言われやっと緑間の忘れ物を届けに来たのだと思い出す。
「えっと!わたし、秀徳バスケ部のマネージャーやってます!緑間くんの忘れ物を届けに来ました…」
カバンの中をガサガサ漁ると、例の本が。
心結はその本を取り出して女の人に見せた。
「あ、それ今日のラッキーアイテムとか言って持ってたわね…」
「そうなんです。忘れていってしまったみたいで届けに来ました」
女の人は本を受け取ると、また笑って言った。
「ごめんなさいね!あの子わたしと似て少し抜けてるところあるから……あ、そうだあなたバスケ部のマネージャーさんって言ってたっけ?」
「はいっ!そうです…」
何か言われるのではと思い、ビクビクしていると予想外な返事が返ってきた。
「あの子あんまり自分のこと話そうとしないんだけど、あなたのことは話を聞いたことあるのよ。寒いし、お礼と言っちゃナンだけど家、寄ってかない?」
そう言って指さされる緑間宅。
何がなんだか分からなくなって、心結はとりあえず首を縦に振った。