第11章 Come back.
緑間がおぼつかない足取りで帰った部活後。
「あれ?この本真ちゃんのラッキーアイテムじゃない?忘れてっちゃった!」
「まじかよ。あの緑間がラッキーアイテム置いて帰るとか相当重症だな」
「そうね、帰らせてよかったかも。」
「つか、どうするよこれ。オレ届けに行ってあげてーけど冬休みの宿題終わってなくて先生に呼び出されてんだよなー」
「え、和成まだ終わってなかったの!?早く出しなよ!」
「後少しだから今日中には終わるって!」
「早く終わらせないと部活停止になっちゃうじゃない!」
「だから!今日中には終わらせるから大丈夫!で、今はラッキーアイテムの話だよ!」
高尾は話の流れを変えるように緑間のラッキーアイテムを手に取った。
緑間の本日のラッキーアイテムは小説らしく、少し分厚目の本にはブックカバーがかけられていた。
何を読んでいるのか気になって、二人は恐る恐るブックカバーを解くと、
「「動悸・息切れ・胸の痛みが気になったら読む本……」」
本にはでっかくタイトルにそう書いてある。
中身をパラパラと見ると、原因や結果など、かなり詳しく書いてあった。
「やばくね?」
「…うん。」
「これ小説なのかよ…」
「そうじゃなくて!やばいでしょこれは!」
いくつか思い当たるフシがある。
最近少しバスケをしただけで息苦しそうにしていたり、ぼーっとしていたり、さっきだって体調を崩して帰ったのだ。
その上ラッキーアイテムといえどもこんな本を持ち歩いているなんて……
「真ちゃん、大丈夫かなぁ?」
「………ワカンネ」
「これわたし今日届けに行ってくる。そのついでに早く病院行けって急かしてくるね」
「…お願いします…」
二人は青ざめながら体育館を後にした。