第11章 Come back.
苦笑いしながら高尾は言うと、夢は申し訳なさそうに肩を落とした。
「…ごめんね、高尾くん……」
「大丈夫だって!だったらオレがバスケ教えてやるよ!」
高尾は夢にバスケットボールを持たせ、後ろに立ってゴールに向かって構えさせた。
「こうやって構えてー、手首をひねってボールを回転させてシュートすんだよ」
相手は真後ろで密着した形で立っている。
吐息が耳にかかってくすぐったくて、意識するとその状態がたまらなく恥ずかしくなる。
何せ、その相手はあの高尾だ。
「ほらっやってみ!」
顔が熱くなって、それどころではない。
夢はその場で固まって動けなくなった。
「西堂!おい!聞いてる!?」
「えっ…!?」
後ろから肩を叩かれやっと我に返る。
「やってみろって!」
何と言われたかよく覚えてはいなかったが高尾の見よう見まねで手首をひねってシュートを放った。
放たれたボールは回転しながらそのままゴールネットを揺らした。
「おっ入ったじゃんか!うまくなったな!」
落ちてきたボールを拾い上げると、高尾はニコニコ笑いながら夢を褒めた。
その笑顔が本当に格好よくて、また褒められたくてその後も夢はひたすらシュートの練習をした。
シュートを入れるたび、笑いながら褒めてくれる。
それがたまらなく嬉しかった。
「もう暗いし、そろそろ帰ろうぜ」
あれから1時間は経っただろうか。
疲れて一息つくと高尾が言った。
「うんっ」
そう言うと高尾はボールとカバンを抱えた。
もしかしたらこんなに二人でいた時間は初めてかもしれない。いつもなら長いと感じる1時間も今日はすごく短く感じた。
「1時間早かったなーつか、付き合ってくれてサンキュ!」
無邪気に笑って見せる彼。
名残惜しい。本当はもっと一緒に話していたい。
緊張して言葉が出てこなくなってしまうかもしれないけれど、それだけで幸せだった。