第11章 Come back.
「真ちゃーん」
高尾は遠くを歩いている緑間に後ろから声をかけた。
けれど返事がない。聞こえていないのだと思い、さっきよりも大きな声で名前を呼んだ。
「真ちゃーん!!!」
大きな声で緑間の名前を呼んで見えるように手をブンブンと振った。
それでも返事がない。
緑間は下を向きながらゆっくりトボトボと歩いている。
我慢の限界になった高尾は、ドタドタと走って緑間の背中を後ろから押した。
「真ちゃんっ!」
いきなりのことに、緑間は変な声を上げて転びそうになる。
「なっ何をする高尾!危うく転びそうになったではないか!」
「そんなに強く押してねーし!てか何回呼んでも返事しねーからだよ!」
「そうか……」
緑間はメガネを直し、高尾は腕を組んでため息をついた。
「真ちゃん最近どうした?いつもぼーっとしてんじゃん」
「ぼーっとなどしていない。考え事をしていただけだ。」
「どんな?」
「いや、大したことではない」
「ははーん…」
高尾は顎の下に手を当てた。
「な、なんなのだよ」
「もしかしてこの前の調理実習のテスト、オレに負けたから悔しいんだろ!まぁ所詮家庭科だからさ!ドンマイ!」
「は?」
「だからこの前の調理実習のテストだって!オレの方が点数上だったじゃん!先生、真ちゃんの料理食べてすげーまずそうな顔してたじゃん!」
高尾は必死に説明する反面、緑間は呆気にとられた顔をしていた。高尾の言いたいことがやっと分かって深いため息つく。
「そうではない。確かに悔しいが、それごときでこんなに考えるはずがないだろう。」
「じゃあなんだよ?」
「……そのうち話す。」
「はぁー??今言えよ気になるじゃんか!」
「うるさい。その時まで大人しく待つのだよ。」
「ちぇーっ」
高尾はぶーっと口をとがらせ、スタスタと歩いていってしまう緑間を後ろから追いかけた。