第10章 秘密
「…………………」
「最近休んでた理由もこれなんだ。黙って休んでてごめんね。」
「いや、気にすることはない。」
高尾が言っていたことは合っている。何も間違えたことは言っていない。だが、1つさらに衝撃的なことがあった。
「いつも空の面倒見てくれてたおばあちゃんが疲労で倒れちゃって…だから学校早退してわたしが空の面倒見なきゃいけなくなっちゃったんだ」
「……そう、だったのか」
「うん。だからまだしばらく部活休まなきゃいけないんだ。ごめんね。」
心結は今にも泣き出しそうだ。目尻には少し涙が浮かんでいる。
大丈夫なのだろうか。
こういう時、なんて言葉をかければいいのだろう。
分からず、緑間はただ黙っていた。
高尾なら、優しい言葉をかけて慰めてやるのだろうが、オレにはそんなことできるはずがない。
「………っ」
「……辛かったな」
咄嗟に出た言葉がこれだった。
「気付いてやれなくて、すまないのだよ。…ただ、同じチームメイトだろう。なんというか、辛いことがあったらもっと…頼ってくれてもいいのだよ」
そう言って緑間は俯いている心結の頭に優しく手を置いた。
今はこれが、緑間にできる最大の優しさだった。
「辛かったら、辛いと言えばいい。オレでも少しくらいお前の力に……」
手から、心結が小刻みに震えているのが伝わってくる。緑間は泣かしてしまったのかとあたふたと戸惑った。
「す、すまない!泣かせるつもりはなかったのだよ!」
「……っ真ちゃん、ありがと…ありがとうっ…」
心結は泣きながら緑間にお礼を言った。
緑間は一安心すると、なだめるように優しく心結の頭を撫でた。考えると、どれだけ不安だったかが分かる。
「ごめんっ…泣かないようにしてたんだけど…」