第10章 秘密
しばらく頭を撫でてやると、落ち着いたのか震えが収まってきた。そこにブランコから降りた空が駆け寄ってくる。
「おねーちゃんどうしたの?だいじょーぶ?」
空も心結の顔をのぞき込んで心配していた。
「おにいちゃんがおねーちゃん泣かせた!おにいちゃんでもゆるさないよ!」
「いや、オレは泣かせてなど……いや、オレが泣かせたのか?」
「大丈夫だよ。泣いてないよ。」
心結は目をこすると、顔を上げて空の頭を撫でた。目が、赤く腫れているのがわかる。
「だいじょーぶ?おにいちゃんのせいじゃないの?」
「うん。真ちゃんは優しいから、おねーちゃんのこと泣かせたりしないよ。ね、真ちゃん?」
そう言って心結は緑間を見てにっこりと笑った。
なんだ、これは。
高槻の泣き顔なんてW・Cの時に見ているはずなのに。その時はお互い泣いていてよく覚えていないが、明らかにあの時とは違う感情だ。
人の涙を見て、綺麗だと思うだなんて。
高槻から目が離せない。
おかしい、なんなのだよこれは。
「真ちゃん?どうしたの?」
心結が袖を引っ張った。そこでやっと我に返る。
何を考えていたのだよ、オレは。
「な、何でもない。」
「ヘンなの、真ちゃんったら」
また笑う。
こんな気持ちになるなんておかしい。相手は高槻だぞ。
「そろそろ暗くなったから帰ろっか。真ちゃん今日はありがとう」
そういうと、心結は空と手をつないでベンチから立ち上がった。
今まで感じたことのない気持ちに緑間はただ動揺していた。帰ろうとする心結に、ただ一言だけ告げた。
「……気をつけて帰るのだよ。」
「うんっ。真ちゃんのおかけでスッキリしたし元気出た。本当にありがとう。」
緑間は心結と空を途中まで見送ると、遠く離れていく心結の背中をしばらくぼーっと眺めていた。