第10章 秘密
「あ、てか邪魔しちゃってごめんね!どっか行くつもりだったんでしょ?」
そうだ、忘れていた。
走りに行こうと思っていたのだ。
「じゃ、わたしたち行くね!」
そう言い、心結は緑間の足にしがみついている空の手を掴んで引きはがそうとするも、空はいやいやと首を振りながら離れようとしない。
「やーだ!まだ帰りたくないおにいちゃんといるの!」
「ちょっと空!真ちゃんこれから出かけるんだって!行くよ!」
「いーやーだー!おにいちゃんと遊ぶの!」
「……家、入るか?ただ走りに行こうと思っていただけだから大丈夫なのだよ」
「いやいや、空もいるので申し訳ないです」
「別に問題ない。オレも入れてもらっただろう」
「いや、こんな綺麗で大きな家、恐れ多くて入れません!」
頑なに拒否する心結に、緑間にしがみついて離れない空。そして困る緑間。
心結は空の腕を引っ張った。
「こら空!帰るよ!」
「やだかえんない!おにいちゃん、遊ぼ!」
緑間はしばらく考えると、また中腰になって空に言った。
「この近くに公園がある。そこで遊ぶのだよ。」
「ほんと!?やったぁ!」
「えー!ちょっと!」
空は緑間の提案に目をキラキラと輝かせた。
その一方、心結は困りきっている。
「ほら、暗くなる前に早く行くのだよ」
「わーい!」
「ちょっと真ちゃん!いいの?」
「構わん。いつも高槻には世話になっている。その礼だ。」
「……うーん、ごめんね。ありがとう!」
前に子供は好きではないと言っていたのに。
気をつかってくれているのだろうか。
緑間と空は、もう既に歩き出している。
心結も二人の後を追った。
真ちゃんったら、苦手だと言いつつも遊んでくれるなんて、本当は意外と面倒見がいいのかもしれないなぁ。
妹もいるって言ってたし、慣れてるのかも。
そう思いながら。