第10章 秘密
「真ちゃんではない、緑間真太郎なのだよ。」
「なのだよ!しんちゃん!なのだよ!」
空は全く聞く耳を持たない。緑間は困ってため息をついた。心結は緑間と空のやり取りを見て笑っている。
「高槻の弟か?」
「そうそう。言ってなかったよね、わたし弟がいるの。空って言うんだ。ほら空!自己紹介!」
「たかつき そらです!よろしく!しんちゃん!!!」
「だから、真ちゃんではないと言っているだろう。」
「しんちゃんじゃないの?」
「真ちゃんだよ〜」
「やっぱりしんちゃん!なのだよ!」
「もう何でもいいのだよ」
緑間はまた深いため息をついた。
空は心結に似て全く人見知りせず、ワイワイはしゃいでいる。目元が心結とそっくりだった。
緑間は中腰になり、空に目線を合わせて問いかけた。
「えっと、高槻の弟…」
「空でいいよ」
「空は、今何歳なのだよ」
「7さい!しょうがく1年生だよ!」
「そうか、随分と高槻と年が離れているのだな」
「そうなの。9歳離れてるんだよねー」
心結はしゃがみこんで空の頭をなでた。
空はその問いかけにこくりこくりと頷いている。
すると、空はいきなり緑間の足に抱きついた。
「おにいちゃん!」
「お、お兄ちゃん?」
いきなりのことに緑間もおどおどと驚いている。
どう対処していいのか分からず慌てふためいていた。
「しんちゃんおにいちゃんすごくおっきい!巨人みたい!」
「巨人……」
空のまさかの言葉に心結は笑い転げる。
「おい高槻!笑っていないでどうにかするのだよ!」
「ごめんごめん!おもしろくって!」
確かに、緑間と空が並ぶとすごい身長差だ。
巨人と言いたくなるのも分かる。
「……まったく。やはり、子供は苦手なのだよ」
「ごめんね、迷惑かけちゃって」
「いや、そういうことではない。慣れていないだけだ。」
「真ちゃんは?一人っ子?」
「いや、妹がいる」
「えっ!妹!すっごく見たいんだけど!」
「あいにく、今は出かけていて家にはいないのだよ」
「えー、残念………」
心結は頭を下げて項垂れた。
空はまだ緑間にしがみついている。