第10章 秘密
土日の練習。
この二日間、心結は部活を休んだ。
休んだ理由はまた弟のことだと高尾は言っていた。
高尾はあまり気にすることではないと言っていたが、そうもいかない。
最近部活を休むことや、学校すら早退して帰ることも多くなってきた。監督や高尾は心結の休む理由を知っているのだろうが、それ以外の人は誰も知らない。
夢でさえ知らないだろう。
と、いうよりも高尾が知っていてオレが知らないとはなんとも気に食わない。
高尾に言われたとおり、気を使っているのか、知られたくないのかは分からないが気になる。
関係ないと言われたらそれまでだが。
部活後、帰宅して部屋の中で一人で考えていても落ち着かない。
とりあえず走りに行こうと思い立って再度ジャージに着替えた。靴を履いて、いつものように右から紐を結ぶ。
走っているときは何も考えなくてすむし、走り終わったあとは心も身体もスッキリするから走るのは好きだった。
玄関を出ると、太陽は既に沈みかけ、真っ赤な太陽が眩しいくらいだ。
走る前にジャージの袖を捲ると、後ろから少し久しぶりに聞く声がした。
「あ、真ちゃん!」
「高槻…」
振り返ると、そこには小さい男の子を連れた心結の姿があった。
「真ちゃんこんなところで何してるの?」
「それはこっちのセリフだ。それにここはオレの家なのだよ。」
「えっ真ちゃんの家こんなに大きいの」
「…普通だと思うが」
「ひゃー前から思ってたけどやっぱりお金持ちだー!」
心結は緑間の家を見て一人で驚いている。
そして心結と手を繋いでいる小さな男の子は、まじまじと緑間の顔を見つめていた。
それに気付いた緑間も、気まずそうに男の子の顔を見つめた。
「な、なんなのだよ、」
すると男の子は緑間を指さして心結に尋ねた。
「おねーちゃんっこの人だあれ?」
「あぁ、この人はね、お姉ちゃんの学校の友達!」
「なまえは?」
「真ちゃんだよ〜」
「しんちゃん!!!」
心結の弟ーーー空は緑間を指差すとキャッキャと楽しそうに笑った。