第1章 告白
中学の頃からの憧れだった、先輩。
名前は菅原孝支。
バレー部でセッターで、私の2つ上の先輩。
それなりに成績が良かった私は、県内の名門校を両親達に勧められたけれど。
それでもなお、この宮城県立烏野高等学校を選んだのは、ただ単に家から近かったからってだけじゃない。
菅原先輩が好き。
委員会でちょっと話すだけの関係だったけど。
廊下ですれ違ったり、窓際の席から見える校庭で汗を流す姿を見つけたり、あの凛とした響きのある声が聞こえたり。
その度に心臓が大きく跳ねて、ぎゅっと締め付けられるみたいに苦しくて。
あの柔らかい笑顔を見るたびに、どうしようもないくらい幸せな気持ちになった。
好きだ。
大好きだ。
どうしよう。どうしよう、どうしよう、どうしよう。
そんなことを考えている間に、菅原先輩は卒業してしまった。
残り2年間、胸にぽっかり穴が空いたような気持ちで過ごしていた。
そんな私も、晴れて高校生になった。
入学から3ヶ月、未だに菅原先輩に話しかけられていない――――。
言い忘れていたけど、私はコミュ障だ。
どれくらい、と言われれば人見知り程度なんだろうけど、その私が今から告白しようというのだから笑える。
そう、私は今日菅原先輩に告白する。
いきなりハードル高すぎやしませんか、と思われるかもしれないけど。
こっちは3年も片思いしてるんだ。
もう気持ちを抑えられる自信がない。
どんな結果だろうと受け止めて、それで、ダメだったとしても新しい恋をしたい。
3年前からずっと踏み出せずにいた私に、今日でさよならしたい。
前に進む勇気がほしい。
だから、
長い長い片思いを、どうか今日で終わらせてください。
そう願って、私は菅原先輩の下駄箱に1通の手紙を仕舞い込んだ。