第3章 エレベーター
随分飲んだようで、みんなが良い感じになった頃、おつまみがなくなったので、ジャンケンに負けた私は着替えて近くのコンビニへお酒の追加とお菓子を買いに出た。
言われた物を買うと、けっこうな量で両手がふさがった私は閉まりかけのエレベーターに「すいません!」と言いながら乗り込んだ。
中にはフードをかぶった、サングラスの男性が一人で乗っていて、ペコリと頭を下げてくれた。
もう一度「すいません」と頭を下げて27階を押す。
一息ついた時、ガクンと膝かっくんされたみたいになった。大量の荷物のせいもあって、後ろに倒れそうになった私を壁にもたれていた男性が支えてくれた。
依公子:「わ!すいません!」
また、頭を下げる私に、今度は笑顔で頭を下げてくれた。
驚いた事にエレベーターが止まってしまった。
ポカンとする私の前に立って、エレベーター会社に連絡する男性は、私よりずいぶん若い感じがするのに、ものすごく落ち着いていて、頼れる男性な気がした。
男性:「20分ぐらいで動くみたいですから、待つしかないですね」
急に話しかけられて、荷物を持ち直したりしていた私はビクッとしてしまった。
男性:「驚かせてすいません。スゴい荷物ですね?下ろしたらどうですか?」
笑いながら、そう言われて、素直に下ろした私に、
男性:「泊まられてるんですよね?」
と続けて話しかけてくれた。
依公子:「ハイ。友達と人生初のスイートに♪」
男性:「良いですね♪何かお祝い事ですか?」
依公子:「イエイエ、日頃の自分達へのご褒美です。好きなアーティストのコンサートだったので便乗して♪」
エレベーターが止まった不安を、話しかけてくれる声が柔けでくれる。聞き覚えのあるその声は優しくて、私の好きな高さの声だった。