第11章 偶然
依公子:「…太輔くん…?」
太輔:「ん。元気そう…息子さん?捕まえるの?」
笑いながらエレベーターホールを指差した先に息子がこっちを見て手を振ってる。
依公子:「!うん!そう!お願い!楓!コ ラぁ!」
太輔:「待ってて…」
私の肩をポンポンと叩くと、
太輔:「楓く~ん!ママが呼んでるよ~♪」
と言いながら息子に近付いて行った。
追いかけられるのが嬉しいようで、微かな叫び声が聞こえてくる。
フッと静かになったエレベーターホールには、二人の姿がなかった。
驚いた私が握り締めてたスマホが鳴った。
太輔:「エレベーター乗っちゃったんだ♪良かったら、うち来ない?7125C押したら入れるから、7階まで来て♪エレベーター降りて右の一番奥の家」
依公子:「え!?でも…」
太輔:「…ダメかな…?」
なんとなく断っちゃいけない気がして、
依公子:「分かった。上がるね」
そう言ってエレベーターに乗り込んだ。
太輔くんの部屋は、シンプルでショールームみたいな綺麗さ。
場違いな楓がソファで眠そうにしてる。
そばに座ると膝枕でくっついてきた。
頭を撫でてあげると、すぐ眠りについた。
太輔:「コーヒーでい?」
湯気の立つマグカップをテーブルに置きながら、私の隣に静かに座る彼に鼓動が早くなる。