第11章 偶然
う~ん…
矢印はこっちを指してる…でも、そっちはビルの壁ですが…?
スマホの地図アプリを開いて、自宅への道のりを検索中。
道を聞きたくても、誰も目を合わせてくれないし、立ち止まってくれない…
旦那の転勤に付いてきた、初めての東京。
買い物に出たのが不味かった…
方向音痴ではナイはずが、全く分からない…
ふと、手を繋いでいたハズの息子が居ない事に気が付いた。
見ると、高級そうなマンションに入って行く。
誰かが開けた扉から一緒に入ったんだ!
慌て呼んだけど入れるわけもなく、分厚いガラスに隔たれて、息子はエレベーターホールで嬉しそうに走りまわっている。
依公子:「楓~!もぅ…どうしよ…」
ガラスにへばりついていると、エントランスに立つ人影が目に入った。
依公子:「すいません!あの子捕まえてくれませんか!?」
急に声をかけた私に驚いたその人は、手に持ってた鍵を落とした。
慌てて拾って手渡した私の手が掴まれた。
顔を上げると、サングラスの男の人は笑ってる。
依公子:「………?」
ゆっくりサングラスを外した、その人は…
ずっと考えないようにしてた人だった…