第1章 ヴィシャスなんかじゃないわ!/×澤村大地(ハイキュー!!)
ムーっとしていた澤村だったけれど、少し機嫌を直してくれたのか、軽く唇を合わせた。
「うーん、どうしよう、少し治っちゃったかも」
「だろ?」
澤村はハニカミながらも、得意げな顔をする。
何だか腹が立ったから、もっともっと、とせがむ。
しょうがないなぁとわたしを甘やかしてくれる澤村に、やっぱりバレンタインは何かあげたいなと思った。
*
ところで、澤村大地にはあまり物欲というものがない。
来たるバレンタインのために、チョコレート以外のものを用意しようと決意したのはいいが街がチョコレート一色の今、外に出るのは大変危険だ。
甘い匂いがわたしを誘う。
従って何を買うのか決めてから、ちゃちゃっと行ってしまうのが賢いと判断したのだが、プレゼントって何をあげればいいのだろう。
手袋やマフラーはクリスマスにあげてしまったし、バレーや生活用品では色気がない。
アクセサリーは部活があるから付けないだろうし、女からペアリングとかの類いはどうなんだろう。
いっそのこと、新しいブリッブリの下着でも付けてわたしをプレゼントした方が喜ぶんじゃないか、とかまで考えた。いやいや、ないない。
うんうんと唸っているうちに日はどんどんと過ぎていく。
無情にも、本日がタイムリミット。2月13日だ。
どうしようどうしよう、と慌てて財布を持って街に繰り出した。
ああ、チョコレートの楽園とはこのことか。ロイズの生チョコが食べたい。
垂れてくる涎を必死にすすりながら、わたしは街をねり歩いた。
しかして、流石は聖バレンタイン・デイだ。
見事にチョコレートしかない。
一応下着屋さんも覗いたが、気にいる物がなかった。みんな下着買いすぎじゃないか? まずい、どうしよう。
結局、わたしは一つお気に入りのチョコレートを購入、ラッピングしてもらって家に帰った。
本来ならば何か手作りするところだが、剥き出しのチョコレートを前にして理性を保てる自信はない。
今回は既製品で我慢していただこう、とわたしはスクールバッグにチョコレートを押し込んだ。