第4章 散切り頭を叩いても手が赤くなるだけに決まってる/×坂田銀時
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くんっと鼻につくのは甘い糖分の香り。
銀時はゆっくりと瞼を上げるが、いつものように目に突き刺さる朝日がない。
かわりに目元にはさらっとした布の感触があって、彼は乱暴にそれを取った。
「あ、銀ちゃん起きたヨ!! 柚香ー!」
神楽が皿を持ちながら、キッチンへと駆けて行った。
ボーっとする頭で"柚香"とは誰だったかと考える。
あぁ、あのチワワっ子か、と会心するまでにかかった時間3.76秒。俺も歳かァ? と彼は頭を振った。
銀時が横になっているソファの横にあるテーブルには、既にお洒落なぶれっくふぁすと(明らかにそう呼ぶのが正しい)が並んでいる。
さくさくイイ女だか、さくさくイイ男だか知らんが、とにかく焼いたパンだ。無粋だとか言うんじゃないよ、俺ァ 日本人だ。
「おはようございます、銀時サン」
ツンと澄ました顔で柚香が現れた。
銀時は「チィーす」と適当に挨拶して、厠に行って、手を洗わずに顔を洗ってから手を洗って、朝食を前に皆でいただきますをしてから「銀時サン」と名前を呼ばれたことに気がついた。
しかし今更蒸し返すのも妙な話だ。カリカリとしたパンにかじり付きながら、彼は柚香を盗み見た。
神楽と新八にこんな料理が作れるはずもなく、これは明らかに柚香が作ったものだ。
現に神楽は「ぶまあああああ柚香天才ィイイイイ」と物凄い勢いで食らいついている。
銀時と新八は己の朝食が奪われないように少し彼女から距離をとった。
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さくさくイイ女→クロックマダム
さくさくイイ男→クロックムッシュ