第4章 散切り頭を叩いても手が赤くなるだけに決まってる/×坂田銀時
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「んー……?」
柚香が目を覚ますと、見慣れない天井。
嗅ぎなれない布団の香り。
ぼーっとする頭で、なんだか落ち着く香りだなぁと布団の中をゴソゴソと動く。
ぐぅ、とお腹が空っぽなことを告げた。そういえば昨日の夜はいちごみるくしか――
柚香はハッとした。
昨日自宅に帰った記憶は、ない。
布団をめくって自分の身なりを確かめると、しわくちゃになった袴が顔を出した。
「洗うの大変なのに〜……」
はぁ、とため息をついて、伸びを一つ。
部屋にあった時計を見ると、丁度7時を回ったところだ。
休日の朝のような独特の静けさに、柚香は思わず抜き足差足で布団を丁寧に畳んだ。
静かに襖を開けて、きょろきょろと辺りを見回す。
新八と銀時がソファーの上でいびきをかいていて、申し訳ない気持ちがした。
柚香が寝ていた和室もそうだったが、この家にはカーテンがないようだ。
差し込む暖かな光に銀時が小さく声を漏らしたので、彼女はその辺に投げてあった彼のはんてんを畳んで彼の目元に掛けてやった。
勝手に使ってしまうのはどうなんだろう、とも思ったが、後で材料費は払おうと決めてキッチンに立つ。
まず懐からたすきを出して、きゅっと袖を結んだ。
顔と手を洗ってから、冷蔵庫の中を覗く。
あったのはハムが何切れかとレタス半分。そしてコーンの缶。チーズが五切れ。卵が何個か。
戸棚には、賞味期限切れぎりぎりの硬くなったパンもあった。
あとは生クリームにチョコレート、アイスクリーム、小麦粉等々。
お菓子作りにしか使えないようなものばかりだ。
ひっどい食材、と笑いながら柚香はフライパンを探す。
カチャカチャという音が妙に気持ちよくて、小さく鼻歌を歌いながら朝食を作り始めた。
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