第4章 散切り頭を叩いても手が赤くなるだけに決まってる/×坂田銀時
朝食を取り終わって、少し休んでから、柚香は再び席を立った。
キッチンに戻って何かゴソゴソとやっている。
途端甘ったるい匂いがリビングにまで漂ってきて、口の中に唾液の海が広がるのが自分でも分かった。
彼女が持ってきたのは焼きたてのフォンダン・ショコラ。
チョコレートの濃厚な香りに銀時は喜びでぶっ倒れそうだ。
「あの……昨日は、お世話になりました。一応。後で材料費は払います。」
フォンダン・ショコラとフォークをテーブルに並べ、ぶつぶつと小声で言いながらソファに座った。
「……お前、ただの犬っころじゃなかったんだな」
「誰が犬っころよ、誰が!」
彼女は再び怒りだしたが、照れ隠しもあるのだろう。顔が赤い。
銀時は「可愛いとこもあんじゃねーの」と微笑ましくそれを見ながら、いただきますと言ってフォークを手にとった。
神楽、新八は既にケーキにフォークを入れていて、とろりとした中身が出てくるのを楽しんでいる。
――銀時は、何か忘れている気がした。
しかしいくら頭をひねっても思い出せない。
思い出せないのなら、大して重要なことではなかったのだろう、と大胆にもケーキを半分ほど口の中に突っ込んだ。
チョコレートと砂糖の甘さが程よく、口の中に広がる。
喜びの声をあげようと周りを見たら、新八と神楽が顔を真っ赤にして震えていた。
――途端、彼の舌に激痛が走る。
「――っ!?!?」
声にならない声で、叫んだ。
「あ、キッチンに激辛タバスコが置いてあったから、アクセントに入れておいたわ!」
柚香は嬉しそうに手を合わせた。
「ふっざけんじゃねェエエエエエエ!!!!! オィイイイイ神楽死ぬなァアアア!!!」
「ひ、ひたが……舌がビリビリするアル……」
「うぎゃァアアアアアア!?!?!? なんですかこれェエ!? 新手のテロかァ!?」
本間柚香、万屋一同にトラウマを植えつけた張本人が、そこの長である坂田銀時への恋心を自覚してバレンタインを迎えるのはもう少し先の話だ。
fin.
ちなみに銀さんは厠に深夜起きて、いつもの癖で布団に潜って添い寝ラッキーすけべしました
彼は後2年ぐらいしたら落せなくも…ない…
頑張れチワワっ子!