第4章 散切り頭を叩いても手が赤くなるだけに決まってる/×坂田銀時
銀時はハッとして、彼女の前まで走っていった。
「オィイイイイイイそこの女ァアア!! テメェまさかさっきのラブラブ・チョコレート・モンブラン(数量限定)その一味かけて食ったんじゃねーだろうな!? あん!?」
「はぁ? 何よオッサン。別に買ったものをどう食べようと、私の勝手でしょお!?」
女は楽しい食事を邪魔されて苛ついているのか、急に怒鳴られたことで機嫌を損ねたのか、銀時に負けない好戦的な態度を取った。
「お、ま、え、に付けられたこの靴跡忘れたとはいわせねーぞコノヤロー。それともあれですかァ? つい30分前のことなんて忘れちゃうようなお馬鹿さんなんですかァ?」
「何よそれ信じらんない!! モンブラン買えなかったからって私に八つ当たりしないでよね、オ、ジ、サ、ン!」
「誰がジジィだ、誰が! 俺ァまだピッチピチの、化粧水だってハジかれてどっか飛んでく20代だってのォオオ!」
銀時は自分の肌をブニっと摘んで女の前に差し出した。
それをバチンと一発引っ叩き、鼻で嗤う。
「いってェエエエ!! ありえねぇ! 旭山動物園のマントヒヒみてーなしょっぺー顔してんじゃねぇよこの猿!」
「誰がマントヒヒよ! あんただってハゼみたいな顔してんじゃないの。大体一味唐辛子の何が悪いっていうの!? 甘さの後にぐんっとくる辛さがたまらなく良いんじゃない!」
「おめーの味覚は明らかにイッちゃってますゥウウ! これだけは江戸中が僕の味方ですゥウウ! このイカレポンチ!」
女はぷちん、と切れたように白目をむいて、一気に残りの一味にまみれたおはぎを口に突っ込んだ。
「ふぁれぇばぁ、いはれぽんひでふって!? あ゛ぁん!?」
「うわ、汚ねーよ! あんこ飛ばしてくんな!」
立ち上がって銀時のジャージと着流しの胸ぐらを掴むと、前後に揺さぶりながら怒鳴り散らす。
「むぐむぐ……んっ、は、大体ねぇ、貴方ってばいきなり怒鳴り散らしてきて失礼だと思わないんですかァア!? 私と貴方はつい先程出会ったばかりだと思うんですけど! そりゃね、確かに貴方の顔を踏んだのは悪かったと思いますよ。でもオバちゃんたちとの限定品戦争に負けてあんなところに寝っ転がってたあんたが悪いんですコノヤロー!」