第7章 VS お父さん
ドリンクやタオル、救急箱等の準備が大方終わった頃、アップをしていた選手が一度ベンチに戻ってきた。
リコ先輩の元に集まって最終確認をする選手たち。
その真剣な表情を見たらなんだか私の背筋ものびて、気合をこめてぐっと両の拳を握った。
ドリンクやタオルの位置と数を確認していると、ふと背後から肩をたたかれる。なんの用かとバインダー片手に振り返れば、首元にてを当てて視線をさ迷わせる火神がいた。
アップでどこか痛めてしまったのだろうか?
心配になって救急箱をとるために向きを変えようとしたけれど、火神は私の腕を掴んで動きを止めさせた。
一体どうしたというのだ。
さっぱり分からなくて首を傾げる。
「あー……その、お前さ……、さっき顔色悪かったけど、大丈夫……なのか?」
「あ……うん。気づいたらおさまってたから、もう大丈夫だよ。心配かけてごめんね」
「ん、ならいい」
火神はそう言って安心したような笑顔を浮かべると、私の頭を軽く撫でて最終確認をする先輩方の輪に戻っていった。
「…………」
ぼんやりと火神の背中を眺める。
10番のユニフォームを纏う姿はなんだか眩しくて、思わず目を細めた。
ふと、空いている方の手を頭に乗せてみる。
火神に触れられたそこは、
こそばゆいような違和感が残っていた。