第12章 告る
「本当に泊まっていかなくて大丈夫?」
玄関で彼がまた尋ねる。
「大丈夫だよ。クマちゃんいるから。バイバーイ」
私はクマのぬいぐるみで手を振る。
彼がくれたぬいぐるみ。
僕がいない夜に、抱いて眠るといいよって。
「なんだか嫉妬しちゃうなぁ」
彼が唇を尖らせる。
私はちょっと背伸びして、その唇にチュッとキスする。
「今夜は10時から、君が楽しみにしてるドラマだね」
「うん! あれ? 私、逢坂くんにその話したっけ?」
「したよ?」
「そっかな」
彼はニッコリ微笑む。私も。
「眠れないときは何時でもいいから電話してね。眠くなるまで話そう」
彼が優しく言ってくれる。大好き。
「うん。ありがとう」
「また明日ね」
私たちは手を振る。
…
私はクマちゃんを抱えてリビングのソファに座る。
私と、クマちゃんと2人で。
スマホをチェックする。
パスワードは逢坂くんの誕生日のまま。
やっぱり…。
北城くんのアドレスはない。
後、クラスメイトの如月くんや守部くんも登録したはずなのに消えてる。
中学の元カレ、ネットで知り合った人の連絡先もない。
ま、この辺はもう連絡する気はまったくないけどね。
男の人の名前で残ってるのは、お父さんと逢坂くんだけ。
そっか、逢坂くん消したんだ。
それにしても、クラスメイトのも消しちゃうなんて厳しいなぁ。
私はゲーム機の中からゲームソフトを取り出して、ケースにしまう。
仕方ない、これ明日返しちゃおう。
あ、そろそろドラマ始まる。
私はクマちゃんと一緒にドラマを観る。