第10章 甘える
ある朝、逢坂くんは今日も迎えに来てくれた。
「おはよう」
「おはよ!」
私は元気に挨拶する。
「あれ…? サキちゃん少し元気ない?」
私の頬を手で包んで、彼は私の顔をのぞく。
「あ…。昨日あんまり眠れなくて。薬飲まなくても眠れそうだったから飲まなかったんだけど…
なんか結局ぐるぐるしちゃって…。
もしかして顔疲れてる?」
「うん…少しね。今日は休むかい?」
「ううん。家で一人でいるより学校行ったほうが気楽だから」
「僕も休んで一緒にいてあげるよ」
「え…そんなの悪いよ」
「君はもっと甘えたほうがいいんだよ。僕とか…お父さんにもね」
「お父さん…」
「お父さんとメールとかしてる?」
「うん」
「眠れないから病院に行くって言ってみたら? 処方してもらった薬なら気にせず飲めるだろ」
「うーん…」
「言いにくい?」
「うん…。私、小6の時…両親が離婚した時、私が決めたの。お父さんについていくって。お父さんは仕事が忙しいってわかってたけど、お父さんと一緒に住むって決めたの。
だから…今さらお父さんを困らせるようなこと言いたくない…」
彼は困ったように首を傾げる。
私、逢坂くんまで困らせちゃった…。
「お父さんはサキが辛い思いをしているほうが困ると思うけどなぁ」
そう言って、彼は私の頭をなでなでする。
「ふふ…逢坂くん、お父さんみたい」
私は彼に軽く抱きつく。
「お父さんかぁ…」
彼はつぶやく。
「学校行こう。お父さん」
私は彼の手を引っ張って、玄関を出る。