第2章 覚める
いくらでも眺めていられる…彼の寝顔。
私は部屋の中をウロウロして、いろんな角度から彼を眺める。
ベッドに乗っかってみる。
横向きに寝ている彼を、背中から覗き込む。
よく寝てる…。
私は彼の顔に耳を近付ける。
スースーと寝息が聞こえる。
柔らかそうな頬はほんのりと赤い。
私は自分の唇で、そぉっと、彼の頬に触れる。
……。
ふふ…ふふ…。
私は指で自分の唇に触れて、その感触を確かめる。
やっぱり彼の頬のほうが柔らかい。
もう一度だけ…ゴメンね。
私はもう一度、彼の頬にキスする。
彼は寝ている。
王子様はお姫様のキスで目を覚まさないのかな?
…
わかってる。
私はお姫様なんかじゃない。
でも人魚姫の気持ちならわかる。
声を売り払ってでも、
王子様と過ごす時間が欲しかった。
その後、泡になってしまったとしても。