第8章 撮る
メイド服に着替える。
お店では開いた胸元が気になったけど、実際着てみるとスカートも尋常じゃないミニ丈だった。
「あ、あの…こんなのちょっと動いただけでパンツ見えちゃうよね…」
彼の顔を見る。
「大丈夫。全部見た」
そう言いながら、バッグからデジカメを取り出し、こちらに向ける。
「やっ…嫌! 撮らないで、こんな格好…」
私はなけなしのスカートを引っ張る。
「大丈夫。もっと恥ずかしい写真を既に撮ってる」
そうなんだけど…。
大丈夫、の意味がわからなくなってきた…。
…
夕食の準備をする。メイド服で。
これは…密かにテンションが上がる。
彼もなんだか嬉しそうにその様子を写真に撮る。
…
夕食を食べ終え、お皿を片付けて、お茶を飲む。メイド服で。
「9時だね…。逢坂くん、そろそろ帰らないとかな…」
私は彼の顔をチラチラ見て様子をうかがう。
「今夜も泊まっていくよ。ちゃんと家にも伝えてきた」
「本当? じゃあ歯ブラシ出すね。下着洗濯しようか?」
私は彼に尋ねる。
「歯ブラシは出して欲しいけど、洗濯はいいよ。そんな服着てるからって妙な張り切り方しないでくれよ」
「あ…ごめんなさい。家に人がいるのが嬉しくて」
自分が恥ずかしくなって、ちょっと言い訳する。
「お父さんは家をあけることが多いの?」
「うん…。海外出張が多いし、日本にいても帰りは遅いから…カレーも余っちゃうの。さっき食べたの、ね」
私は笑いながら説明する。
「そう」
彼は相槌を打って、一口お茶を飲んだ。