第5章 捕まえる
「やだっ…このまま置いてかないでっ…」
泣きながら彼を見上げてお願いする私を、彼は冷たい目で見下ろす。
「君は少し痛い目にあったほうがいい」
冷たい声で彼が言う。
「簡単に死ぬって言ったり、ネットで知り合った男に会ったり…。世の中舐めすぎてる」
「簡単に言ったわけじゃないっ…」
私の目から涙がボロボロこぼれる。
そんな私の様子を眺めて、彼は小さくため息をつく。
「少しの間、一人でよく考えるといい。半日もしないうちに戻ってくるから」
「やだ…行かないで…ぐすっ…ううっ…」
「後でね」
そう言い残して彼は、部屋の扉を閉め、去っていった。
玄関の閉まる音も聞こえた。
シーンとした部屋の中には、もう私の嗚咽の声しか聞こえない。