第5章 捕まえる
…
目が…覚める…
あったかい…
そっか…今日は逢坂くんいるんだ…
…
目を開ける。少しずつ。
目の前に逢坂くんがいる。
「ん…起きてたの? 逢坂くん…」
「うん。少し前からね」
彼が柔らかく微笑む。
窓の外は明るい。
学校のない土曜の朝。
今、何時かな…。
起き上がり、ベッドに座り込んで、壁の時計を見る。
「8時か…。逢坂くん眠れた?」
彼の顔を見下ろす。
「うん。サキちゃんが添い寝してくれたおかげで」
彼がニッコリと微笑む。
「それはよかった。じゃあ…そろそろ逢坂くんを帰してあげないとね」
「そっか。もうお別れか…」
私の顔を、彼がじーっと見上げる。
私は彼に微笑み返す。
「ふふ、寂しい?」
「寂しいよ。その…」
「うん…?」
「やっぱり死ぬのかい?」
「…うん」
「そっか…」
話しながら、まず足を縛ったロープを解く。
そして学習机の上に置いておいた手錠の鍵と、彼のスマホを持ってくる。
「はい、返すね。スマホ」
「あぁどうも」
彼の顔の前に置く。
彼の背中にまわり、再びベッドの上に座る。
彼の手首にはまった冷たい金属の輪っかを持ち上げる。
鍵穴に鍵を差し込む。
カチャン…
逢坂くんを解放する。
「外したよ」
彼に声をかける。
「ふぅ…やっと自由だ…」
彼が伸びをする。
「身体が上手く動かない気がするよ」
私の顔を見て苦笑いする。
「ごめんね…」
少し泣きそうになっちゃう顔を隠しながら、私はベッドを降りる。