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境界の先

第4章 眠る


「どうしてそっち向くの」

背中から、彼が問いかける。

「そっち向いてたら寝にくい」

そのままで私は答える。

「どうして? 恥ずかしいの?」

「そうだよ」

「僕のことが好きだから?」

「そうだよ」

「素直で可愛いね。サキちゃん」

「どうも」

「こっち向いてよ」

「嫌だ」

ガサガサ…ドンッ…

彼が私の背中に頭を乗せる。

「ちょっと…!」

私は文句を言う。

「寂しいんだよ。僕をこんな目にあわせたのは君なんだから、少しぐらい面倒みてくれてもいいだろ」

「もう…」

私は身体の向きを変える。

彼と向き合う。

……。

思ったより顔が近い。

思わず目を伏せる。

「恥ずかしい?」

からかうように彼が言う。

「うん…」

正直に頷く。

「大胆なことするわりに、恥ずかしがり屋さんなんだね。サキちゃん」

「逢坂くん、なんで急にサキちゃんとか言うようになったの」

「ん…なんだか親しみがわいてね。君に」

私は首を傾げる。

「僕たち、どこか似ていると思わないかい?」

「…わからない」

「そっか。ふふ」

彼も目を伏せて、少し笑う。

私は彼が目を伏せている隙に、彼の顔を盗み見る。

「もっと近くにおいでよ」

目を開けて、彼が私の顔を見る。

私は再び目を伏せる。

「う…ん…」

むにゃむにゃ返事だけする。

「近くに来て。サキちゃん」

少し目を開ける。
彼の顔が見える。

私は少し、彼ににじり寄る。

「ふふ…あったかい…」

彼が気持ち良さそうに目を閉じる。

私も…目を閉じた。

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