第9章 無理のない脱走計画を
ギルに連れられ歩いていると、行き止まりにさしかかった。
立ち止まる私たち。
どうするのか私がキョトンとしていると、ギルは一切の動きを凍らせた。
ただ突っ立って静止していた。
怪訝に思うが、声をかけたり動いてはいけない気がして、私も同じく彫像のように固まる。
「……誰もいねぇみたいだな」
しばらくして、沈黙が破られた。
なるほど、周囲の気配を探っていたのね。
ギルはそう言うと、おもむろに岩肌の壁に手をかざした。
なにもない場所だ。
私には岩を触っているようにしか見えない。
と、ギルが岩の壁をタイピングし始めた。
なにをしているんだ一体。不憫でもこじらせたのか。
「――あとは、公子、と」
「はい?」
「なんだ?」
え?
「あの、今私の名前を呼びましたよね」
ギルが目をぱちくりさせる。
私も多分、同じ表情をしていると思う。
「いや、今日の復号キーワードの末尾が“公子”だったんだ」
当然のごとくそう言われた。
どなたが設定されたんでしょう……どこのどいつだ……いやドイツじゃなくて……
と、脳内でカチッとなにかがはまった。
“復号キーは彼女の名前だ!”
「なる……ほど」
つまりルートは、今から私が着く場所に合流しよう、とフェリちゃんに言ったんだ。