第9章 無理のない脱走計画を
ふいに、暗がりの闇に際立つ銀髪が現れた。
続いて、警戒心が滲むルビーの瞳。
謎素材にへたりこむ私と、ほぼ同じその目線。
――鳥さんは、いない。
「どっから? 誰の手引きで入ってきた?」
声は、耳の右から左へと完全に通り抜けていた。
実物の破壊力――何度も言っている気がするが、要は見とれてしまっていたのだ。
なんというか……なんというか……端正な顔立ちってレベルじゃねーぞ!
「おい、聞いてんのか?」
「ひゃっ! す、すすすみません!」
ハッと我に返される。
このギルベルト・バイルシュミット、まるで番犬、いや猟犬――むしろ警察犬だ。
ドーベルマンがドイツ原産だからちょうどいい。ってなにを言ってんだ私。
しかし本当に、縄張りを守る義務を背負ったボス、のような雰囲気だ。
ココはそんなにマズいとこなのか?
「えーと……」
じろじろと無遠慮に見られる。
まごまごする私。
どうしよう。
あなたの弟さんにここへ落とされました! としか言えない……。