第9章 無理のない脱走計画を
「っ!」
ルートはすぐさま方向転換し、別の路地に飛びこむ。
しかしあの距離ではすぐ追いつかれてしまう。
背中ごしに見えた後方で、茶色の上着がはためいた。
足音が近づく。
このままじゃ――!
「公子、俺を信じてくれるか?」
乱れた息遣いで、唐突にそうルートが尋ねた。
いきなりなにを?
しかし……愚問だな。
真実も、答えも、いつもひとつ――
「ja!」
「いい返事だ!」
にっと頼もしすぎる笑みに口元を歪め、すぐ近くの大きめな電話ボックスのドアを音を立てて開き、私をそこに放り込み――って
「きゃあああああああああああああああああああああぁぁぁぁぁぁっ!?」
なんで私落下してるのおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!?
風で体を高速で切り裂かれながら、私は叫ぶしかなかった。