第9章 無理のない脱走計画を
一瞬の無重力状態ののち、ぽすんと私はルートの腕の中に収まった。
「しっかり掴まってろ!」
わけもわからないまま、足も地につけず体が飛ぶ。
混乱しきった頭でもわかった。
私は、いわゆるお姫様抱っこをされているらしい。
ただでさえ不安定な体勢にもかかわらず、手がなにも掴んでいなかった。
つまり、落ちそうになる。
「きゃああぁぁっ!!」
悲鳴をあげ、慌ててルートの首に飛びつくと、青い瞳がすぐ目の前にあり――つまりそれはルートと超至近距離で目があっているということで――
「すっすすすみみゃせ◎¥★%*●§@×△」
「あっ離すんじゃない!」
「みぎゃあああぁぁっ!!?」
恥ずかしさで死にそう。ありえない。本当に顔から火が出そうだ。火力発電が余裕でできる。
ちらっと見えたルートの顔が赤かった気がするけどそんなわけない。
風邪のせいだ……ってルート風邪じゃないか!
心配になり、恐る恐る見上げて顔色を窺うが、至って普通だ。
私をかかえながら、よくもまあこんなスピードで走れるもんだと感心する。