第8章 In the closed closet
クローゼットが揺れ、ビクッと肩がひきつる。
「……どいてくれないかい?」
「断る」
扉を挟んだすぐ近くで、ルートの低い断言が聞こえた。
私を閉じ込め――いや隠した扉を背にして、アルの前に立ちはだかっているらしい。
、、、、
「やっぱり、なにか隠してるんだね?」
アルが低く笑った。
それは、全てを見透かした勝者の宣言だった。
この鬼畜メタボめ……
「あぁ、この店の企業秘密の諸々をな」
ルートはあっさり肯定する。
と言っても、それはまるっきり嘘の内容だ。
こんなクローゼットに、一体どんな秘伝のタレがあるというのだ。
びくぶるしつつ、フェリちゃんも加勢して声を上げたりしている。
「……嘘だね」
「何がだ?」
「君はなにをそんなに焦ってるんだい? 本当はそこになにがあるんだい?」
「貴様が知る必要はない」
空気の温度が急速に下がっていく。
これが殺気というものか、と妙に納得してしまう。
ムキムキVS怪力なんて、激しく笑えない。
というか、勝敗の前にまずクローゼットが壊れる気がするんですけど……
ドンっ! と一層クローゼットが揺れた。
なにをバトり始めたのか。果てしなく泣きたい気持ちになる。
そういえばルートは風邪だ。
なら無理をさせないためにも、ここで素直に出た方がいいのでは?
しかしそれだと、今までの彼らの努力を裏切ることになる。一体どうすれば――
バタンっ!
「しまった!!」