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【ヘタリア】周波数0325【APH】

第8章 In the closed closet


「一週間くらい前に、菊んちで異常なエネルギー値を計測したんだ。けどなにもなかったんだよな、菊?」

「え、えぇ。報告差し上げるようなことはなにも……」

どうやら菊は、私の訪問をアルに言っていないらしい。

“私の訪問”は“なにもなかった”とは言えないはず。

しかし菊はすばらしく冷静だった。どこ吹く風の涼しい顔だろう。

「その数値が、女の子が現れたとこから計測されたんだ」

「へ、へぇ~」

「しかもその数値が計測されてすぐ、意識障害の救急要請がどっと増えたんだよ。一週間も、さっきも」

「それは初耳ですね」

菊が素直に驚いた。私の目も見開く。

私がトリップした先のエネルギー値(なんのエネルギー値かは不明)が急激に上昇。

その上昇のために意識障害件数が増加。

まとめるとこんなことが起きたらしい。

それに彼の口ぶりは――まるで私が引き起こしている、とでもいうようだ。

アルはなおも続ける。

「だから、その子がなにか関係してるんじゃないか、って思ってる。大体いきなり逃げ出すとかおかしいしね」

いきなりスコーン+「捕まえろ!」で逃げないのもおかしいと思います。

「もしその方を見つけたらどうするおつもりですか?」

「んー、とりあえず話を聞かせてもらうんだぞ!」

「万が一本当に関係者でしたら?」

「協力を得られたら嬉しいぞ」





尋ねていた菊が、凍ったように押し黙った。

場を再び沈黙が支配する。

アルの声色が、ナチュラルに黒かった。

本人に悪意はないのだろう。だからこそ、余計に暗黒純度が高かった。

大体アメリカンなアルフレッドさんの言う“協力”って……一体なんなんでしょうね?



乾いた笑みが浮かんだ。そこはかとない命の危機を感じる。

ルートが私を隠した理由が、骨の髄まで染み渡るように理解できた。

よく考えればわかることだった。

今にも大きな災いを引き起こしかねない異変、それに関係する可能性の高い“鍵”。

他国に奪われたくない、自国で早く手に入れたい――普通はそう考えるんじゃなかろうか。

特に、アルフレッドは。

「……」

ルートヴィッヒ様に土下座して感謝を述べたかった。
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